渋谷で書類に記入してもらい前田信明展を観て作品を購入する

(
某日。


残り少しだったMarit Paasche, Hanna Ryggen: Threads of Defiance (Thames & Hudson, 2019)


を読了する。John Elderfield, Morris Louis: The Museum of Modern Art, New York (MOMA; distributed by Little Brown, 1986)


所収のJohn Elderfieldによる論文を読み始める。キュービズム、印象派、マティス、シュルレアリスムのオートマティズム、ポロック、フランケンサーラー。そこにモーリス・ルイスをその作品に沿って高密度で論じている。

14時過ぎに外出する。 身内に記入してもらってから提出する書類がある。東急東横線渋谷駅、横浜方面に向かって最前部ヒカリエ改札外で待ち合わせる。立ちテーブルにて書類を記入してもらう。関連することを話し合い、ひとまず予定を決める。書類を受け取りお別れ。ヒカリエから地上に出て書類を郵便ポストに投函する。あとは相手側がすべきことを行えばこの手続きは終了。書類のやり取りなど面倒で時間がかかった。

渋谷駅に戻り銀座線に乗車して銀座駅で下車する。地下から銀座三越本館に入る。

7階のギャラリーで開催中の前田信明展「Vertical and Horizontal, 2025 -垂直と水平- Small works」を観る。

「自らが立つ大地によって、重力という垂直性、地平・水平線という世界が続いていく感覚。
 前田信明氏は天地・万物に繋がる無限の空間に祈りを捧げるかのような純粋抽象絵画を一貫して追求し続けています。
 本展覧会では新作の小品を中心に、前田ブルーをはじめ多彩な作品を展示いたします。
 幾層にも塗り重ねられたカンバスに浮かび上がる景色は、一つとして同じものはありません。」

祈り。

この展示のすぐ後に、Contemporary HEISにて前田信明展「浸透する色彩−Permeating Color, 2025」が開催される。大作は主にこちらの個展で展示されるのだろう。そういうこともあって銀座三越での展示では新作の小品が中心なのだろう。

30.5×28.3cmの作品群が大半を占めている。このサイズの作品群のみアクリルボックスで額装されている。








これでも小作品全部を捉えていないけれども、引きで。


タイトルらしきものとしてDB25-0314、BW25-0310、BR25-3010、YB25-0320、RY25-0302、などと記されている。それぞれのタイトルが付された作品の色彩から考えて、DB = dark あるいは deep blue、BW= blue white、BR = blue red、YB = yellow black、RY = red yellow、だろうか。小作品は全て2025年制作ということなので、アルファベットに続く「25」はおそらく2025年、を指すのだろう。ということは、そのあとに続く0314などの数字は完成した日付け、この場合は3月14日、を指すのだろう。

ギャラリー入り口には大作が1点


上掲の小品よりは大きい小型から中型サイズ作品群

上の大作の横に設置されていた赤作品。大作の青作品と小型の赤作品で、色彩とサイズのコントラストが際立つ。とはいえ逆、つまり大作の赤作品と小型の青作品では釣り合いが取れない感じがする。


上掲引きの画像中、中央左側奥に見える黄色作品


以下でも触れる白作品


珍しい横長作品。小さな壁面にこの1点のみが設置されている。他作品と縦横比率及び画面構成が異なり、並置して調和させるのが難しいことから1点のみの設置なのだろう。


一見して惹かれた、エントリー冒頭に画像を掲載した作品を購入する。再掲。


653x602x40(mm)
アクリル、顔料、キャンバス
タイトル: DB21-0315

2021年の作品のようだ。これまで出展されなかったのだろうか。あるいは出展されたけれども購入者がいなかったのだろうか。運が良い。

他の作品群がどれも良い中で、一見して「あ、これだ!」と自分にとって質的差異を感じる、この一瞬に何が生じているのだろうか。

どの作品も横から見ると色彩が何層も重ね合わせているのがわかる。色彩の積層は時間のそれでもある。購入作品の縁。


外出前に読んでいたせいか Morris Louisを想起する。

どの作品にもある画面中央の垂直線。拡大画像


途切れそうで辛うじて繋がっている極めて細く白い垂直線は、最上部と最下部でほとんど消失していく。このため半ば宙に浮いているように感じられる垂直線は、近傍の黒と濃い青が浸透した部分及び画面の濃い青色と鮮烈なコントラストをなす。

この濃い青作品が設置された壁面には、少し離れた右横に上掲の白作品が設置されている。白作品は青作品よりもほんの少しだけサイズが大きいだろうか。青白の2作品のみが白い壁面に設置されていて深い青が一層際立つ。そのように設置されているのだろう。

熊本在住の作家がたまたま在廊されている時間だった。自分が作品を観ているとギャラリーの方が作家を紹介して下さる。

お話をする。何度か作品を拝見していること、深い濃い青の作品群に惹かれることをお伝えする。作家は、青色は上手く扱えるようになりましたとのこと。自分が、緑色は難しそうですねと言うと、扱いが難しいとのこと。制作では水を大量に使用するらしい。良質の水が必須なのだろう。作家が理想とする色彩を出すには熊本の水が最良なのだろう。同じ顔料・溶剤・水といった素材を同量使用しても、気温、湿度、自然光の具合、などによって色彩が微妙に異なるとのこと。どのように調節するかは長年の勘としか言いようがないとのこと。などなど。「発酵の職人みたいですね」というと、まさにそのような感じで画面が「熟成」するのを待つとのことだった。中央の垂直線・水平線は、ガイドラインは引くけれども例えばマスキングテープなどを貼って塗り残しているのではなく、ブラシで絵具を塗っていくときにガイドラインに向けて徐々にブラシをキャンバスから遠ざけて行くことで、ブラシが完全にキャンバスから離れる地点、及びその直前に置いた絵具の辺りへの浸透具合、のバランスで成立しているとのこと。このようにブラシをコントロールしているため、画面の色彩にも場所によって微妙な差異がある。撮影画像の補正で各種フィルターを掛けると極端に強調された微妙な差異を観ることができる。

上述の、本日の個展のすぐ後に行われる個展ではアーティストトークセッションとレセプションがあるので、お越し頂ければ大変ありがたいです、と作家が仰る。会場の広さの都合で人数制限があり予約制とのことで、予約をする。楽しみ。

神奈川県にあるポーラ美術館で開催されている「カラーズ ― 色の秘密にせまる 印象派から現代アートへ」展にも作品を出しているようそうだ。リンク先から画像を借用する。


展示の最後の方の部屋のような区画を使って縦横2メートル近い作品が3つ展示されている。こちらのインスタグラムに掲載されている、作家が作品の横に立っている画像から大体の作品サイズがわかる。「カラーズ 色の秘密にせまる」というテーマに対して応えることのできると作家が感じている3作品、いうことなのだろう。

作家はこの後すぐに飛行機で熊本に戻り制作を継続するとのことだった。運の良い時間帯に行き購入した。別の場所で購入手続きをしていると、作家がわざわざ来られてこれから熊本に帰ります、アーティストセッションでまたお会いしましょう、と声をかけて下さる。ありがとうございます。

購入した作品を特にゆっくりと観て濃い複雑な青色を堪能する。

画面から十字架や、Harold Rosenbergが極めてmetaphysical 形而上学的な作家と形容するBarnett Newmanのzipを連想しないわけではない。2024年の個展で作家はしかし次のように記している。

「いつ、どこで、どのような状態で何をいかなる方法で作品にするか。私の作品は、その時と制作する場、素材、自己との関係性で成立する。カンヴァス・フレームは変形、縦と横のサイズの比率は1.085:1である。これは私の作品の色彩と形態が空間にフィットする聖なる数字である。私たちの存在を表す、重力の垂直性。大地を意味し、世界が続いていく感覚を導く水平性。画面に垂直と水平のガイドラインを引く。床に水平に設置されたオリジナルの特殊なカンヴァスへ、淡く溶かれた顔料とアクリル絵の具、そして、透明で神聖なる多量の水を画面に置きながら、幅の広い刷毛でコントロールしていく。画面に絶対的な空間が立ち現れるまで、その行為を何十回となく繰り返し、カンヴァスは時間と共に熟成されていく。画面の側面に重力でもって何層にも垂れた絵の具の状態は制作プロセスの現実を見せ、カンヴァスという支持体が色彩と一体化したオブジェクトとして現前する。 2024年2~3月、GALLERY KTO 原宿の画廊空間、この場における美しく広がっていく空間の創出を実践する。
いついかなる状況であろうとも美術制作を続行する人間の活気ある欲求。1960年代、高度経済成長期に多感な時を過ごした私の興味の対象は、社会そして自然と対峙しながら人間の生へ向かう躍動である。私は、その心情を持続させ、一貫して抽象美術の制作に集中してきた。」

制作の場とプロセス、素材、重力、水平な大地とその上の世界、「社会そして自然と対峙しながら人間の生へ向かう躍動」。形而上学的という感じではない。

充実した色彩を貫く3つの線があるようだ。記されているように、床に水平にカンヴァスを設置して制作するのだから、制作時に作家が感じる重力及び絵具と水が従う重力の線は、床・地面への方向への線だろう。上掲のカンヴァスの縁に残る絵具が示すように。重力の垂直性を表す画面内の垂直線は、しかし描かれるときには水平に置かれた画面の縦方向に描かれるから、描かれる時の重力の線とは異なり描かれる時の重力に直交している。作品を壁に設置すると、制作時の重力の方向は作品の後方への方向になり、描かれた垂直線が重力の方向になる。とはいえ上述のように、その垂直線は画面上で宙に浮いているようにも感じられる。絵画作品としては絵画空間は鑑賞者側に向けられているから作品前方・鑑賞者側への線がある。加えて、今日作家から伺った話によると、作品設置の仕方として、作品が壁面から少し離れて壁面と並行に設置できるようにカンヴァスを作っているとのことだった。絵画空間が鑑賞者側に壁から浮かんで向かってくるような感じを与えるように。ということで、カンヴァス後方への力の線・宙に浮いている感じのする垂直の線・こちら側へ向かう線、という3つの線が、手前に向かって浮かんでいる感じのする作品に内在しているようだ。

さらに、微かに白く残っている垂直線は絵具の層としては最も塗られていない箇所あるいはカンヴァス地が出ている箇所だから、厳密には鑑賞者から見て1番奥に位置する箇所となる。他方で、色彩としてはほぼ白と言ってもよい垂直線は、周りの濃い青色とのコントラストのおかげで、鑑賞者側に向かって輝いているように感じられる。あるいはこちらに向かって来るという感覚が濃い青色部分よりも早いもしくは強い。ここにも画面後方に向かう線と画面前方に向かう線があるようだ。最後に、白い垂直線に、重力の垂直性と同時に、どこからか微かに差し込む光を感じるかもしれない。その場合、源が下方にあり下から引っ張られる重力の垂直性の感覚と同時に、線の源が上方にあり上から注いでくるような感覚が生じるかもしれない。

何よりもまず充実した色彩が感覚を満たし、さらに上述のように感覚が刺激される。

「購入したなあ」と思いながらギャラリーを出る。

Astor Piazzolla, La Camorra


を聴きながら外出していた。

6:00 起床。

NY市場終値をチェック。

 

グラス一杯の水を飲んで柱サボテンとボトルツリーをヴェランダに出す。

 

シャワー。

 

大きめのカップに珈琲を淹れる。オーガニック豆 20g260ml。飲みながら読書。


腕立て伏せ15x 10セット。

 

9:00-9:30 第一食。自炊。マグネシウム (にがり顆粒 2g)、ビタミンB (Dear-Natura Mix)、ビタミンC (L-アスコルビン酸 1.5g)、ビタミンD3 (Health Thru Nutrition 10,000Iu)、亜鉛 (Dear-Natura, 14mg)、ルテイン、ゼアキサンチン、コリンサプリ、タウリンサプリ (1000mg)、ナイアシンアミド (500mg)イヌリン粉末 6g、グリシン粉末 3gを摂取。

 

ストレッチ。


音楽、雑用、読書、休憩。


ビタミンC (L-アスコルビン酸 1.5g程度を摂取、バナナを食べて外出。

)


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