「コレステロール神話」 (4) 中性脂肪、HDL、心臓病心血管疾患・インスリン抵抗性の予測因子

(
某日。

承前。

Jonny Bowden & Stephen T. Sinatra, The Great Cholesterol Myth, Revised and Expanded (Fair Winds Press, 2020) を読んでいる。

Steve Reich, WTC 9/11 を聴く。


9.11の時期にアメリカに住んでいたこともあって重苦しく心に響く。

「大いなるコレステロール神話」が誤りだとしても、通常の血液検査での脂肪代謝項目が無意味ということでも、コレステロールは心臓病・心血管疾患とあるいはその予測因子として無関係ということでもない。

インスリン抵抗性については後ほどエントリーを改めて述べる。通常の血液検査での脂肪代謝項目にはLDLとともにHDLと中性脂肪 triglyceride の値が記してある。

実は、中性脂肪のHDLに対する比率は、心臓病とインスリン抵抗性の両者の最良の予測因子の1つである。この比率はコレステロール値よりも遥かに良い心臓疾患の予測因子であり、インスリン抵抗性の優れた予測因子である。これは決定的に重要なことである。
“The ratio of triglyceride to HDL is one of the best predicators of both heart disease and insulin resistance” “a far better predicator of heart disease than cholesterol ever was (pp. 59; 75), “an excellent predicator of insulin resistance” (p. 85). This is called “critically important” (p. 184). 

中性脂肪のHDLに対する比率の重要性をいくら強調しても強調しすぎるということはない。それはインスリン抵抗性検査の良い代理となる。インスリン抵抗性がそれほど重要なのは、それが心臓疾患の最も強く最も一貫した予測因子の1つだからである。
“We can’t overemphasize how important the triglyceride to HDL ratio is. It’s a good surrogate for an insulin resistance test” (p. 185). “Insulin resistance is one of the strongest and most consistent predicators of heart disease” (p. 186).

さらに、高い中性脂肪値はそれ自体で心臓疾患への独立のリスク要因である。中性脂肪値が高いほどインスリン抵抗性を持っている可能性が高まる。
“Higher triglycerides are an independent risk factor for heart disease” (p. 96). “The higher your triglycerides, the greater the chance that you’re insulin resistant” (p. 85).

現行の中性脂肪「正常基準値」は30-149 mg/dLだけれども、150では高すぎる。最適な中性脂肪レヴェルは100以下である。
“an optimal triglyceride level is under 100, not under 150” (p. 60).

自分の過去3年間の中性脂肪値平均は41。極めて小さな値でおそらく健康に最適なレヴェルの1つなのだろう。以下でも言及する。

中性脂肪のHDLに対する比率の話に戻る。具体的にはどのような数値か。

もし比率が2程度 (例えば中性脂肪値が100、HDLが50) であれば、実のところコレステロールレヴェルに関わりなく、喜ぶべきである。もし比率が5であれば (例えば中性脂肪200、HDL40)、心血管系イヴェントのリスクが著しく高まる。
“If you have a ration of around 2 (i.e., 100 triglycerides, 50 HDL), you should be happy, indeed, regardless of your cholesterol levels” (e.g., pp. 60, 75). “A ratio of 5 (example: 200: 40) increases your risk of cardiovascular events significantly” (p. 60). 

比率2を超えれば超えるほどリスクが高まること、比率2以下だとリスクが減少すること、が書籍中繰り返される。それほどこの比率が予測因子として重要だということだろう。

自分の場合はどうか。この比率は何と0.41である。上述のように自分の過去3年平均中性脂肪値は41。過去3年平均HDLコレステロール値は99。41/99 = 0.41。

上で引用したように、書籍では比率2かそれ以下が健康だと述べてある。0.41というのは低すぎるのではないかと疑いたくなる。確かに統計的に「外れ値 outlier」なのだが非常に健康なようだ。

書籍には次のようにある。

もしあなたが統計的に「外れ値」であり、ということはHDL値が中性脂肪値よりも高い場合、あなたは [比率2あるいは2より少し下の場合よりも] さらに調子が良い状態である。比率は1以下なのだから「!」感嘆符をつけてまでそのように記している。
“if you are an outlier, and your HDL is higher than your triglyceride, you’re even in better shape because your ratio will be less than 1.0!” (pp. 184-85). 

あるいは、もしあなたの中性脂肪値がHDL値よりも小さく、比率が1以下の場合、この本を読むのを直ちに止めても全然構わない、とまで述べる。なぜならあなたの [心臓病・心血管疾患・インスリン抵抗性の] リスク要因は低すぎて図表の圏外にあるから、と。
“If your triglycerides are smaller than your HDL and you get a ratio of less than one, you can pretty much stop reading this book right now. Your risk factor is off-the-charts low” (p. 75). 

確かに比率が0.5を下回っても大丈夫なのかは述べられていない。それでも中性脂肪値41は現在の基準値30-149 mg/dLの範囲には収まっている。上述のように、この基準値の上値に関しては実は100以下が最適だと記されいるけれども下値については、例えば50以上が最適である、ということは述べられていない。

ということで脂肪代謝が示す健康状態に関する現時点での最新研究によると、0.41という比率は、健康すぎるくらい健康なことを示していると解釈する。

体感でもこれ以上ないくらい体調は良い。あるいは自分は21世紀に入ってから風邪・インフルエンザ・最近ではコロナ、が発症・で発熱したことがない。身近な人が発症発熱していても。自分も感染はしているのだろうが発症も発熱もしない。調べたことはないけれども免疫が最適化されて機能していると考えるのが妥当だと思う。自分のコレステロール値を考えると、前回のエントリーで言及したコレステロールの免疫に果たす役割についての傍証となると思う。

しかしこの話題の最初のエントリー「ミシェル・ンデゲオチェロの新作を聴きながらコレステロールのことを考える」で述べたように、健康診断での血液検査結果を受けて「要注意」「医療機関要受診」と言われるのだった。血液検査結果には上述の中性脂肪値もHDLコレステロール値も記載されているのだが。

読んでいて面白い。

続く。
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