(
某日。
承前。
コレステロールと心臓病・心血管疾患とは、これまでの「コレステロール神話」の意味では無関係であることが判明したので、コレステロールを中心とした議論から、では心臓病・心血管疾患の原因や予測因子は何かという議論に移行していく。酸化、炎症反応、糖化についてすでに言及した。酸化と炎症反応だけが心臓病を引き起こす原因なのではない。インスリン抵抗性もそうした原因である。インスリン抵抗性は迫り来る心臓病の最も早いサインであり体内炎症反応の早いサインでもある。そしてインスリン抵抗性を引き起こす最大の原因は砂糖である (pp. 76-)。
糖質を摂取すると血糖値が上昇する。インスリン機能の1つは、正常な血糖値を保持すべく、血中の糖質を、それがエネルギーとして消費されるように筋肉細胞に運ぶこと。糖質が多ければインスリンレヴェルも高くなる。糖質を慢性的に過剰摂取しているとやがて筋肉細胞がインスリンの効果に抵抗するようになる。新たなエネルギー源は要らないからだ。インスリンは筋肉細胞に糖質を運べないので別の場所を探すほかない。この別の場所というのが脂肪細胞。脂肪細胞は喜んで糖質を取り込んで大きくなるとともに、大量の炎症化学物質を放出する。炎症は心臓病の主要な原因・促進剤の1つ (pp. 172-73)。
こうしたことが起こっていても、インスリンが頑張っている間は、血糖値は「正常」でありうる。高インスリンにも関わらずインスリンが血糖値を「正常」な値の範囲に収めることがもはやできなくなると、血糖値は「正常」な値を超える。高血糖値は異常を伝える遅れたサイン "a late sign of problems" (p. 180)。
インスリン抵抗性は、摂取した糖質(糖類・澱粉)量を身体が適切に処理できなくなると生じる。
“Insulin resistance happens when the body is no longer able to effectively manage your intake of sugar and starch” (p. 185).
インスリン抵抗性があるとほぼ間違いなく境界型糖尿病 prediabetes を引き起こす。境界型糖尿病は糖尿病に繋がり、糖尿病は心臓病に繋がる (p. 77)。
糖尿病患者の8割が心臓病・心血管疾患で亡くなる。インスリン抵抗性は糖尿病罹患リスクを2倍以上にし、糖尿病は心疾患や心臓発作で亡くなるリスクを2倍以上にする (p. 14)。
“80 percent of diabetics die of cardiovascular disease. … Insulin resistance syndrome doubles the risk of diabetes, which in turn more than doubles the risk of dying of heart disease or stroke” (p. 14).
インスリン抵抗性が心臓血管系cardiovascular systemに与える影響の例としての高血圧。インスリンは血管壁を狭める。通路が狭いということは血液を流すのにより強い圧力が必要になるということ。インスリンは腎臓に「塩分を手放すな」と命じ、腎臓は従う。体内塩分濃度を適切に保つために体内により多くの水分を保持する。水分が多いということは血液の容量が大きいということ、そうした血液を体内に循環させるためには強い圧力が必要。高血圧の人の優に70%がインスリン抵抗性を有している。(p. 81-82)
“Insulin can narrow the artery walls…. It [also] talks to the kidneys. Insulin’s message to the kidneys is this: Hold on to salt. … Increased sodium retention results in increased water retention. More water means more blood volume, and more blood volume means higher blood pressure” (p. 81; emphasis in original).
健康な100歳以上の人の共通点3つ。低い中性脂肪値、高いHDL値、そして低い空腹時インスリン値 (p. 82)。最初の2点は現在51歳の自分に間違いなく当てはまっている。3点目も、すでに述べた中性脂肪値とHDL値の比率から考えて、ほぼ間違いなく現在の自分に当てはまる。
インスリンは、正常なインスリン感受性のある人においては抗炎症的 anti-inflammatoryだが、インスリン抵抗性を持つ人においては非常に炎症的 highly inflammatory である (p. 83)。
“insulin is anti-inflammatory in people with normal insulin sensitivity, but it is highly inflammatory in those with insulin resistance” (83; emphasis in original).
加齢とともにインスリン感受性insulin sensitivityは減少しインスリン抵抗性は増加する (85)。
相変わらず面白い。
続く。
)
コメント
コメントを投稿