矢野静明作品をお迎えする (2)
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某日。
「矢野静明氏のアトリエに伺う」「矢野静明作品をお迎えする (1)」 の続き。
2点お迎えした作品中2点目の画像。自宅の壁に設置した状態を撮影したもの。
タイトル: Ekron/エクロン (2018)
サイズ: 160x235(mm)
油彩・インク・杉の木の板
これも以前から惹かれていた小作品で作品画像をiPhoneに保存して見ていたのだった。
この作品についても、今回のアトリエ訪問に際して、拝見したいということも、お迎え検討の意志があるということも、お伝えしていなかった。
ところがアトリエを訪問すると、壁になぜかこの作品がかけてあったのだった。「矢野静明氏のアトリエに伺う」最初の画像中央辺りにある横長の小品。
木の板に描かれた矢野作品は極めて珍しい。初めて購入する木の板に描かれた作品。市販されているウッドパネルではなく杉の木の板を上掲のサイズに作家自身で切っている。そのためか特に上部が不定形になっている。これも味があって非常に良いと思う。
使用する絵の具材が同じでも、キャンバスに描かれる場合とは質感が異なっている。
上掲画像中、作品内の右最上部近くの縁にある小さく細い黒い部分は、もともと周囲と繋がった部分で、周囲部と同様の地塗り・線描・点描で覆われていた。iPhoneに保存してあった画像もそういうものだった。
アトリエで拝見した作品ではその部分が剥離していた。
最初に剥離しているのを見つけた時には正直「この作品はお迎えできなくなってしまったな」と思った。作家と話しているうちに「黒で補修してみましょう、どうせ何らかの形で補修しないといけませんから」ということになった。画面中に他にも最初から画面構成の部分として何箇所か黒く塗られている部分があり不自然にはならないだろうという予想と、以前と同じような地塗り・線描・点描を新たに施して繋げようとするとむしろ不自然になるだろう、という判断から。
作家がそのようにその場で補修する。乾くのを待って再度作品を拝見する。全く違和感のない、むしろより引き締まったように感じる、高密度の素晴らしい画面になった。これもまた、こういうタイミングでのこういう巡り合わせだと思いお迎えすることにした。
「矢野静明作品をお迎えする (1)」で掲載した作品同様、自分にとってこの作品もその小さいサイズ (通常のキャンバスであれば日本でいうSM、フランスでは1号、とほぼ同サイズ) を遥かに超えた2つのスケールを感じる作品。
作家に作品拝見の希望もお迎え検討の意志も伝えていなかったこともあって、作家は私がこれら2作品を所蔵するとは思っていなかったとのこと。また作家自身これらの作品を気に入っていたとのこと。突然このように作品を持ち去ったことを申し訳なく思う。同時に、作家本人のお気に入り作品だということを知らずして選んだことについては、重要なことは他者の評価如何に関わらず自分にとって良い作品であることだとしても、嬉しく感じるのだった。
なお、タイトル「エクロン」も旧約聖書に登場する土地・町の名前。イタリアはアナーニにある、エクロンの想像図を描いたとされる13世紀のフレスコ画と響き合っているような気がする。
矢野作品には他にも旧約聖書関連のタイトルが付けられたものがある。その中で自分が所蔵している作品についてはいずれブログで紹介するつもり。
Miles Davis, Milestones; In A Silent Way; を聴く。
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